研究紹介
視覚的注意
我々の視覚系は視界に入るすべての対象を平等に扱うことはせず、状況に応じて 一部の対象だけに選択的に注目して処理を行うという過程を持っています。これは 「視覚的注意」と呼ばれ、しばしば「注意のスポットライト」と例えられます。 本研究室では、視覚的注意の行き先を予測するモデルを構築してコンピュータシミュレーションを 試み、同時に眼球運動を計測することで、画像特徴と視線・注意分布の関係など調べています。 また注意負荷と有効視野との関係を調べて運転時の危険予測に応用するといった研究を行っています。
運動知覚のメカニズム
左の図の中心を眺めていると、回転が止まったとき、動いていた向きと逆方向の 回転が見えます。これは運動残効と呼ばれる錯視です。この知覚現象を研究の手段として用いることで、 人間の視覚系がどのように運動情報を処理しているのかを調べることができます。 我々は高周波と低周波の波を重ね合わせた実験刺激を用いることで、「速い運動」と「遅い運動」の処理メカニズムが それぞれ別に存在することを明らかにしました。また、片眼だけに運動残効を生じさせることで両眼間速度差を生起させる 方法を開発し、三次元の奥行運動と空間周波数選択性との関係などを調べています(論文はこちら)。
脳活動解析

脳波やMRI画像などから脳活動を解析して視覚研究に応用することができます。 例えば、視覚的注意を向けた対象が点滅していると、点滅周期と神経細胞群の活動が同期し、 その成分を脳波で取り出すことができます。我々は、これによって観察者がどこの何に注意を向けているかを 明らかにできると考え、研究を進めています。また、fMRI画像を解析することで、観察者が見ていた色・形・運動などを推定 する研究を行っています。
物体認識過程の解明

実世界の物体が脳内でどのように表現されているかという問題は、視覚科学に限らずマシンビジョンや人工知能 の分野で古くから考えられてきました。我々はこの問題に視覚心理物理学の立場から取り組んでいます。左の図で、 一瞬提示されるニワトリは物理的にいつも真正面を向いていますが、知覚上は顔の回転方向に傾いて向いているように見えます。 我々は新しく発見したこの錯視を用いて、三次元回転運動の処理が物体認識過程に影響を与える可能性を調査しています。さらに研究を進めることで 異なるオブジェクトどうしの内部表現の関係を一部明らかにできると考えています。
視覚と触運動感覚

マウス操作などの間接的操作を行うとき, 脳内では網膜座標系から関節座標系への変換が行われています. 我々はPHANToMというフォース・ フィードバック・デバイスを用いて, 3次元空間での様々な座標変換を評価するシステムを作りました.また、 視覚と触覚との運動・空間表象の相違や相互関係などを調べています。
意識と無意識

人間の学習には,意識を伴う学習と,無意識に行われる学習の2つがあります。 意識を伴って引き出される記憶よりも,無意識的に学習して得られた記憶を用いた方が, 一度に多くの処理を行うことができることが知られています. ここでは,無意識の学習の効果に関する研究を行っています.