ごあいさつ
こんにちは、鯉田と申します。2025 年 10 月 1 日に高次視覚システム研究室の教授に着任しました。専門は視覚認知の基礎で、特に色覚を中心に研究しています。研究手法は、ヒト心理物理実験をベースに、サルを対象とした電気生理実験、画像解析、光学計測等が挙げられます。これら様々な手法を用いることで、脳と心が外界とどのように接しているのかの科学的理解を目指しています。
なぜいま色覚研究か
視覚研究は長い歴史があり、特に色覚は約 100 年前に Guild と Write によって測定された等色関数が今もなお有効であるなど、研究分野としては古典的に見えるかもしれません。それでも、いま研究を行うべき理由として以下の 3 つが挙げられると思います。
ディスプレイ技術の発展に伴う社会的要請:昨今のスマートフォンや VR ゴーグルのディスプレイは、明るく鮮やかで高速、高解像度を突き詰めています。この中で特に「鮮やか」にする点に問題があります。色を鮮やかにするためには原色の分光分布を細く鋭くする必要があり、等色関数の標準化の際に問題として指摘されつつも見逃されてきた誤差や個人差といった問題が、現場で顕在化しています。様々な改善案が提案されて標準化されているものの、いまだに現場では職人の直感による調整に依存しています。これを技術によって解決する必要があります。
非視覚認知の視覚経路の発見:2000 年代初頭に発見された視物質メラノプシンを含む網膜神経節細胞(ipRGC)は、睡眠覚醒のリズム、瞳孔の対光反射、気分障害、片頭痛といったヘルスケア領域において極めて重要な視覚システムであることが分かってきました。その一方で、目に視物質があるにもかかわらず、メラノプシンの視覚認知への関与を調査してきたこれまでの研究で明らかになったのは、驚くほどに既存の視覚認知には効いていないということでした。これは視覚の特性を知覚によって調査してきた既存の実験手法ではその特性を調査することが難しいことを意味します。その一方で、昨今の明るい照明やディスプレイは健康への悪影響が広く知られることとなり、科学的調査の必要性が増しています。
色覚は普遍的に人気:色彩はそれ自体に魅力があり、絵画や写真や映像表現、ファッション・コスメ、プロジェクションマッピング等の光芸術といった領域で多くの人々の関心を集めています。これらは芸術、素材開発、情報工学という異なる学際分野であるとともに、その知的基盤が視覚認知にあることは間違いありません。各分野で職人芸となっている経験則は重要ですが、その背景にある脳と心と物理の関係性を明らかにすることは体形的な教育に役立つともに、純粋な学術的な興味の対象として人々を惹きつけるでしょう。
ぜひあなたも
このような背景をもとに、私個人としも日常で気づいた視覚現象に関心を持って、視覚科学の玄人として研究に取り組んでいます。例えば風景を眺めているとき、お絵描きをしているとき、体調が悪いときなど、違和感を感じたり変なものが見えたなと気づくことがあります。これらは研究の種となる貴重な気づきです。色と光にかかわる視覚体験に関心を持っている方であれば、すぐに研究活動に参加できます。専門的スキルは研究室で1から学ぶことができますので、出身は問いません。むしろ様々なバックグランドを持つ人が集まって学際的な共同研究をすることが、本質を知るために重要だと考えています。これは所属する電気通信研究所の使命でもあります。
みなさんとお話しできることを楽しみにしています。
